からめ

怪PR社

『お願いします、要さん』(マイペースエリート×庶民派苦労人、執着攻め×強気受け)

お願いします要さん、と滝神に言われ、やって来たのは営業部フロア。透けた壁が全体を広く見せる設計が特徴的で、常に誰かが電話で外部と話をしており、フロアの至るところで簡単な情報交換や営業戦略などのやり取りの声が聞こえる。このフロアに入ると、要…

◆小ネタ 『カンタンな方法』(マイペースな腹黒、我が道を行く堅物、天然な俺様)

トート・マグランはいつも一人、不機嫌な強者として廊下側後ろの、真横に柱のある席を陣取って寝ていた。物音を立てる者がいると、容赦なく妖圧を掛けてくるので、休み時間には皆そそくさと教室を離れる。地下一層、ほとんどの生徒は地上にある妖怪企業に就…

◆小ネタ『気になる股間』(八割男性×自由人)

「今月、調子どうですか?」 「おはぁぁぁ?!」 様々な形のコピー機や、製本機械、文房具の置かれた準備室の壁際、コピー機前待機中にスマホを起動させたその時、その油断しきった耳に突如湿っぽいイイ声が注がれれば誰だって叫ぶ。 「ハンクさん……っ」 ハ…

◆小ネタ 『湯たんぽ』(強面俺様×強気な相方)

永吉という男は、とにかく身近で都合のいい男だった。性欲をぶつけるのに丁度いい。お互い慰めあうために交わっていた。 「ウ……、ぁ、あか、き……、はぁ、ウ……んぅ、んんッ……ん、んく」 ずっぷずっぷと永吉の尻穴に、猛りを勢いよく挿し込んで、永吉の内側で…

◆小ネタ 『なしなし』(世話焼き攻め×マイペース営業マン)

のっぺら坊種の野平には顔がない。妖力を消費し、誰かの顔をつくる。誰の顔がいいかを自由に選べる変わり、社会人として働く際には、常に誰かの顔を借り……妖力を消費しなければならない。 童の姿で時の止まった一本もまた、社会では大人の姿を保つよう要求さ…

いめちぇん

◆小ネタ 『夜の虫けら』(執着攻め×強気受け)

鬼李が深夜にふと目を覚ます時、隣に寝ている永吉はたいてい、猫のように丸くなって呻いている。呻き声で目が覚めたわけではなく、直感的に意識が隣に持ってゆかれて目が覚める。昔より頻度は減ったが、永吉は時折こうして一人で苦しんでいることがある。は…

泣いた青鬼 コミカライズ

『恩師の声』(ミュライユ×亀、モブ視点)

川越警察署地下にある、川越妖怪警察署の取り調べ室は暗い。蛍光灯がチカチカする狭い部屋に閉じ込めた恩師は、つまらなさそうな顔をして、現れた私を上から下まで見た。 「まだそんな太ってたのか、ちゃんと痩せろよ、可愛いんだから」 警察官になって妻子…

『うしのきもち』(生真面目×俺様)

小学校の時に参加した友人宅のクリスマス会。社会人一年目の時に経験した恋人と過ごす落ち着きあるイブの食事。思い出は美しくぼやけているが、未来は恐ろしく鮮明だ。 「家族と俺と、どっちが大事なんだよ」 不貞腐れた牛鬼を前に、あら太は項垂れていた。…

『鬼の餌』(孤高のエリート部下×万年教育係上司)

『怪PR社』では、管理部の女子社員が中心になって男性社員に向け、バレンタインデーのチョコレートを送る。そのため、ホワイトデーには、今度は管理部の男性社員が中心になり、女子社員に向けて、お返しの贈り物をするのである。 毎年、贈り物の選定をしてい…

『柄黒の行方』(孤高のエリート部下×万年教育係上司)

先日、元部下の野平が、めでたく第二営業部マネージャーに昇進した。 人より飲み込みが遅く、怠け癖があり、協調性のない野平は大変な問題児で、第三営業部でリームリーダーを務める田保の手元に居た時は、ああ、こいつは気をつけてやらないと、すぐ辞めてし…

『海のイロ』(危険色男×強気女子)

泉岳寺の裏にある竹林で、その子は生まれた。明け方まで男同士の荒々しい性交が行われていた寝屋に、朝日と共に強いエネルギーが発生した。神々の知らせを受け、すぐに駆け付けた。 我々が現場に着くと、二人の土親は恥ずかしそうに乱れた身を正しながら、宝…

『幸せな馬』(下半身馬の男×総攻め色男)

丸二日、何も口に入れていない。 亀を保護した馬はまだ目を覚まさず、馬の目が無ければ、この屋敷のものは誰一人亀の身を案じなかった。 『俺にも食事を出してくれ、働いてるだろ、馬の世話をしてる』 西洋の細長く高さのある食卓に着席はさせられるが、食べ…

『可哀想な馬』(下半身馬の男×総攻め色男)

 葉月の末。頭上には青と白のクッキリした美しい晴れ模様が広がっていた。風鈴がひっきりなしに高く鋭い警報のような音を上げ騒いでいた。 妖怪世界と人間世界、双方に向けて門を開いている陰間茶屋、江戸は芳町の『亀屋』を、主人兼仕込み屋として切り…

『甘味デート』(総攻め色男の失恋と友情)

久しぶりに鶴の顔でも拝もうかと『怪PR社』第一営業部に足を運んだ。部員に声を掛けると部長室に通される。 すると戸の前に、いつもの顔ぶれが立ち並んだ。 「……ヤのつく手下どもか、ご苦労な事だ」 『怪PR社』営業フロアの、ガラス張りの壁と広い窓は陽光を…

『狼ユーレイ』(無口な喧嘩屋×ヘタレ)

 リストラされそうだと後輩から相談を受けた。 創設五百年の歴史を持つ『ぬり壁セキュリティ』に勤める白鬼種の白鬼 陽太郎(しらき ようたろう)とその後輩、鶴種の鶴 洋次郎(つる ようじろう)の仕事は、要人警護であ…

『おやしらず こしらず』(執着攻め×子持ち強気受け、第三者目線)

 洋次郎が教育を任された虎松の二親は、川越の賑やかな観光地のただ中、地下一層の高級マンションに居を構え、広いキッチンを持っていた。 二親とも仕事が忙しく、一ヵ月に一度しかこの空間を使わない。 よって、家事手伝いのアルバイトも兼任している『…

『畑のミカタ』(甘党の親分+親分大好き子分)

以津真(いづま)種の以津真 弥助(いづま やすけ)は、先日、管理部から営業部に異動した。周囲には反対され、上司からも渋い顔をされた異動だったが、無理を言って通して貰った。 異動してみると十年ぶりについた営業の仕事は楽しかった。人事の仕事にもやりが…

『雲の巣』(天才×平凡)

 怪PR社、企画部は幾つかのグループに分かれている。 そのうち玩具や文具、常用小物についての企画を出しているグループをグッズGと呼ぶ。分かり易い例を上げるとアイドルグループのコンサートや、車のメーカーショー、スポーツ大会、展示会などのイベント…

『お疲れ様です、要さん』(マイペースエリート×庶民派苦労人)

 21世紀の妖怪世界は、人間世界とほぼ同じ。 妖力や貧富の差はあれど、経済で回る仕組みが作られ、ほとんどの妖怪は人と関わらず生活している。人を襲って『肝』を収穫する仕事は第一次産業、日本の都市部ではあまり見られなくなった。 地…

『つちのこ』(不妊に悩む妖怪カップル、堅物×健気)

今日の朝も産声を聞くことなく、気まずい思いで寝床を出た。 大河童種の大賀九郎は、冷えた朝の寝室で服を身につけながら、大きな溜息を吐いた。白い息がシャツのボタンをかける自分の手に掛かる。 どうして、と口の中で作った声を飲み込む。 「今日も出来ん…

『夏の陰色』(正義感の強い人間+美しい妖)

 初客を取らされようとしている陰間が、戸にへばりついている。 嫌だ、お父さんお母さん、嫌だ、嫌だよう。 陰間の泣き叫ぶ声が耳に響き、明岐(あかき)は唇をぐっと口の中に挟み目を瞑った。今年元服したばかりの明岐の目には、客取りを嫌がる少年が友…

『こわいモノ』(執着攻め×強気受け)

 こわいモノの近くに居続ける事が難しそうだったので逃げた。逃げたら、こわいモノのこわさが増幅した。いよいよ逃げられないぐらいこわくなって、向き合ったら少し、そのこわさを軽減する事が出来た。「鶴」 呼んだのに、こちらを振り向きもせず何だよと応…

『踊る赤鬼』(尽くし系強面×恋多き紳士)

 忘年会が近い。出し物をどうしようかという悩みが発生する時期である。昔はこうしたイベントごとは、先に立ってまとめていた青鬼だが、ここ数年、部長職についてからはマネージャーに指示を出すだけですべてが終わるので完全に油断していた。 「手抜きか」…

『鶴に恩返し』(尽くし系強面×恋多き紳士)

少し肌寒くなった飛鳥山公園で。 「鶴を片付けろ」 不穏な台詞を恋人から吐かれた。白い朝の陽光が眩しい。 赤鬼は日向の石段に尻をつき、肩や膝に一杯に乗った猫達の体温でふやけていたが、青鬼は薄色の秋用コートを着込み身を固くしていた。 「どういう意…

『ここは居酒屋』(真面目×強気、過去の恋)

尊敬しているけれど、恋愛するつもりのない男性から求愛された場合、皆さんはどう対処しますか。 という質問を投げた居酒屋の一角。 男だらけの座敷席で、全員が黙り込んで口に含んだビールを飲み下せずに、頬を膨らませている。 「なんて、もしもの話ですけ…

『李帝の寵愛、鶴の忠誠』(大妖怪の皇帝×ボロキレ妖精)

生まれ育った武蔵を離れ、駿河、丹波、須磨を転々と暮らしてみた。出雲や長門を見聞し、筑前に着いた頃、鶴はその男に出会った。 倭国の端にある土臭い港町に、まるで天上人のような一行が降りて居た。人間世界では、数万の兵を乗せた艦船が、まだ海の上で睨…

『いやがらせ』(執着攻め×強気受け)

 体内に宿る怨霊を、コントロールする事ができなくなるのは、いつも情緒不安定な時だ。怨霊は容赦なく、既に定員数に達している体の中に入って来て、鬼李の体を膨れ上がらせる。出来たらすらりとした細身の男で居る事が望ましいと考えている鬼李の心を無…

『闇の怨霊、光の鶴』(執着攻め×強気受け)

 キラキラと光る善良なものになりたい、という欲求が俺の内側を刺激するのは、俺の成分には人間が多く含まれているから。 人間はいつも清らかになることを目標に転生を繰り返している。「鶴……?」 腹の上で腰を振る綺麗な男に声を掛けると、とろりとした目…