からめ

無神経

◆小ネタ『冗談』(堅物サド×神経質なナンパ師、面倒見の良いオラオラ系)

キケロとエリックは冗談がうまい。その場に四人いれば四人笑う、七人いれば七人笑える冗談を言える。俺は人を笑わせるのが好きだが、滑りがちだ。 「えっ、何て言った?」 上手い冗談を言えるようになりたい。繰り返すとエリックは唇に拳を当てて頬を膨らま…

『筋肉と恋人』(悪女×男前)

出資者の指示で育て屋ベケットに会った。 ベケットにはすでに弟子が一人。 この弟子を倒せば、新しい弟子になれる。 ベケットは大国フィオーレに目を掛けられている育て屋だった。ベケットに送り出してもらえれば、フィオーレの最高兵士『ゴドー』の地位を得…

『娼婦のムスコ』(強気攻め×気弱受け)

 バーに備わった大理石のトイレ、その限られた狭い空間で。数分前まで繋がっていた相手。タカは異性愛者だった。 そうした用途に使われやすいこの店のトイレには消臭機能と洗浄器具、コンドーム自販機まで都合良く備わっており、現在、事後の匂いの消臭…

『トイレの精』(強気攻め×気弱受け)

同性愛者の自覚があり、同性愛者の集まる店に行った。 二十も中頃、故郷ヴィンチでは父親になっているのが普通、という年齢で、俺は「恋人」に飢えていた。ヴェレノは同性婚が認められているし、真面目に「相手」を探すのもいいかと思った。 赤っぽい照明が…

『かわいそう』(野心家兄×無気力な腐男子弟)

私生児として生まれたが、父代わりの伯父がいた。 母は優しく、母と俺を家に置いていた伯父一家は温かだった。俺は恐らく、弟より恵まれて育ってきた。「タクオ、鍵を外せ!!」 弟の引篭もった小屋の戸を叩きながら、俺はどうしてこの弟に構いすぎるのか考…

『味方以上、敵未満』(面倒見の良いオラオラ系×変人権力者)

ルカスの部屋にはいつも、乾いた果実のような品の良い薫りが、ほんのりと漂っていた。木製の家具が多く、茶系の配色で固められたその部屋には円形の棚が部屋を仕切るように置いてあった。 交錯して差し込む美しい光を眺めながら、枯れた深い森の中に居るよう…

『傷心旅行』(ぼんやりモテ男×平凡)

 俺って実は暗いのかなと一時期悩んだりもしたが、一人行動が好きという事実は今も昔も変わらず。一人は楽。一人は自由。一人でいるのが良い。一人最高。 しかし、人にはどうやらオーラというものがあるらしく、一匹狼的な、近寄りがたいような雰囲気を持っ…

『おそろい』(ぼんやりモテ男×平凡)

 自分の欲望には気づいているが、求めたら困らせると分かっている。 困らせてまで求めようとは思わない。横に居てくれればそれで良い。 待ち合わせ時間の十分前。 チェコとリオネは二人きりで立っていた。「どうかエリックとゴドーさんが、二人一緒に来ませ…

『ダッシュ』(ぼんやりモテ男×平凡)

目の前で。 すぐ目の前でカルロがエリックに引っ付いている。 エリックは黙って引っ付かれている。俺がやったら怒るんだよね。 見るものを焼く勢いで、二人を睨んでいたら、「リオネ不機嫌」横でチェコがぼそりと呟いた。 エリックはチェコの言葉を気にせ…

『禁煙』(平凡×男娼、ぼんやりモテ男×平凡)

「はァ?!何時からだよ?!」 大学部と高等部を結ぶベンチの喫煙スペースで、ブルーノ・フランクは甲高く叫んだ。リオネが禁煙に成功したことに腹を立てての大声。 鼻に皺を寄せて、片眉を上げている。リオネにとってブルーノは兄の友人であり、怒りっぽい…

『無味無臭』(ぼんやりモテ男×平凡)

フィオーレ所有の岩山の切れ間を風がビュウビュウと走り抜けていた。 どこもかしこも泥と灰の色をした走行訓練場。夜間訓練のラストは、ここを終着点にする走行訓練といつも決まっていた。岩肌にはり付いて乱れた呼吸に振り回されている者、帰り支度を始める…

『衆人環視』(隠れオネェ×気弱男子)

クドさんの首は太くて力強い。堅い骨の芯があって、少し熱い。馬乗りになって首を絞める体勢でそれを確認する。 「わかった、ありがとう」 背を叩かれクドさんから降りると、クドさんは空を蹴り起き上がって遠くを見た。 「どうですか?」 「感覚は掴んだ」 …

『カマ言葉で喋っていいか?』(隠れオネェ×気弱男子)

闘技には公式と一般がある。一般人が見られるのは一般人の娯楽として設けられた一般闘技のみで、公式闘技は有力一族や大企業の勢力誇示のため行われる。 これは闘技が、そもそもの目的を戦争としていたため。鎖国の際、近代兵器を排除したためこの国では内戦…

『ソウボウキン』(奇人宗教家×ヤリチン)

回ってしまうと何てことはない、受身の立場は楽だった。 ルキノは男に慣れていた。痛みのない挿入は心地良い。心地良いが何だかむなしくて馬鹿らしくて惨めだった。 「キケロはやめておけ・・・」 行為を終えた枕元。向こうを睨むルキノの声。 「別に狙って…

『ルキノと緊縛』(奇人宗教家×ヤリチン)

白金髪に灰目、高い鼻、ここまではいい。凶悪で鋭い三白眼と、パーツ配列が猛禽類を思わせるマグラン一族の顔面的特徴はあまり一般ウケしない。しかし、俺はマグランの中では異例の、恐らく瞳が大きかったのと眉の位置が良かったのが関係しているのだろう、…