からめ

怪PR社 目次③

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◆小ネタ 『夜の虫けら』(執着攻め×強気受け) 

鬼李が深夜にふと目を覚ます時、隣に寝ている永吉はたいてい、猫のように丸くなって呻いている。呻き声で目が覚めたわけではなく、直感的に意識が隣に持ってゆかれて目が覚める。昔より頻度は減ったが、永吉は時折こうして一人で苦しんでいることがある。はじめはどうにか癒してやろうと額の汗をぬぐったり、そっと抱きしめたりしていたが、永吉を苦しめているものの正体を知ってからは、それをやめた。永吉は、鬼李の優しさに苦しめられていた。

 

◆小ネタ 『なしなし』(世話焼き攻め×マイペース営業マン)

 のっぺら坊種の野平には顔がない。妖力を消費し、誰かの顔をつくる。誰の顔がいいかを自由に選べる変わり、社会人として働く際には、常に誰かの顔を借り……妖力を消費しなければならない。

 童の姿で時の止まった一本もまた、社会では大人の姿を保つよう要求され、妖力を消費して体をつくらねばならない。

 

◆小ネタ 『湯たんぽ』(強面俺様×強気な相方)

 永吉という男は、とにかく身近で都合のいい男だった。性欲をぶつけるのに丁度いい。お互い慰めあうために交わっていた。

「ウ……、ぁ、あか、き……、はぁ、ウ……んぅ、んんッ……ん、んく」

 

◆小ネタ『気になる股間』(八割男性×自由人)

「今月、調子どうですか?」

「おはぁぁぁ?!」

 様々な形のコピー機や、製本機械、文房具の置かれた準備室の壁際、コピー機前待機中にスマホを起動させたその時、その油断しきった耳に突如湿っぽいイイ声が注がれれば誰だって叫ぶ。

 

◆小ネタ 『カンタンな方法』(マイペースな腹黒、我が道を行く堅物、天然な俺様)

トート・マグランはいつも一人、不機嫌な強者として廊下側後ろの、真横に柱のある席を陣取って寝ていた。物音を立てる者がいると、容赦なく妖圧を掛けてくるので、休み時間には皆そそくさと教室を離れる。地下一層、ほとんどの生徒は地上にある妖怪企業に就職か、人の皮を被って人世に留学に行く。年頃はまちまちだが、学びをはじめた頃合いが同じの妖達は、一種の連帯感を持って、学校と呼ばれるその場所に通っていた。

 

◆小ネタ 『座らない人』(天然攻め←ナンパ受)

長蔵はその日、東武バスを利用して川越駅に向かっていた。何気なく窓からの景色を眺めていたら見覚えのある顔がバス停の向こう、心臓が高鳴る。遠くからでもすぐにわかる、焦茶の長い髪とハッキリした顔立ち。真っ直ぐひかれた形の良い眉と、平行した切れ長の二重。すっと鼻筋が通っており、目に心地の良い顔面。長身の蘭王は、バス停の標識より高いところに顔があり、とても目立っていた。バスが速度を落としていく中、熱視線を送っていたのがバレて、こちらに気が付くとからっとした笑みを浮かべ、手を振ってくる。バスは蘭王を目指して進み、蘭王の前に止まった。

「座らない人?」

 

『お願いします、要さん』(マイペースエリート×庶民派苦労人、執着攻め×強気受け) 

 お願いします要さん、と滝神に言われ、やって来たのは営業部フロア。透けた壁が全体を広く見せる設計が特徴的で、常に誰かが電話で外部と話をしており、フロアの至るところで簡単な情報交換や営業戦略などのやり取りの声が聞こえる。このフロアに入ると、要はいつもピリッとした気分になった。定時30分前、18時を過ぎているが喧騒は止む気配がない。