からめ

怪PR社 目次 

タイトルをクリックすると作品に飛びます

目次②へ

目次③へ

 

『小豆の熱』(生真面目×俺様) 

「あら太ぁ~」
 廊下から、間延びした低い声が自分を呼んだ。
 牛鬼が長いトイレからやっと帰って来たのだ。
 まとめた書類を鞄に突っ込み、バタバタとフロアを出る。
 広い肩幅と逞しい胸の目立つ、体育会系の肉体を高価なシャツの下に潜ませた色男……『怪PR社』第二営業部のベテラン営業マン、牛鬼種の牛鬼うし雄のもとで、小豆あらい種の小豆あら太は営業補佐を勤めていた。

 

『オトナとコドモ』(世話焼き攻め×マイペース営業マン)

二年前、営業から人事に回された時、妙な感覚に襲われた。突然、何もないところで転んだ時のような放心状態。
 少しほっとした自分がいた一方で、作りかけの砂山を崩されたような、変な悔しさも残っていた。

 

『泣いた青鬼』(尽くし系強面×恋多き紳士)  コミカライズ版

『怪PR社』の営業部フロアは、第一第二第三を壁でハッキリと分けている。しかし透明に透き通ったその壁は、音こそ遮断されているが、誰がどんな動きをしているのか見渡せるようになっていた。

 

『闇の怨霊、光の鶴』(執着攻め×強気受け)     

キラキラと光る善良なものになりたい、という欲求が俺の内側を刺激するのは、俺の成分には人間が多く含まれているから。
 人間はいつも清らかになることを目標に転生を繰り返している。

 

『いやがらせ』(執着攻め×強気受け)

体内に宿る怨霊を、コントロールする事ができなくなるのは、いつも情緒不安定な時だ。怨霊は容赦なく、既に定員数に達している体の中に入って来て、鬼李の体を膨れ上がらせる。出来たらすらりとした細身の男で居る事が望ましいと考えている鬼李の心を無視して、怨霊は鬼李を見上げる程の巨漢にしてしまう。

 

『李帝の寵愛、鶴の忠誠』(大妖怪の皇帝×ボロキレ妖精) 

生まれ育った武蔵を離れ、駿河丹波、須磨を転々と暮らしてみた。出雲や長門を見聞し、筑前に着いた頃、鶴はその男に出会った。

 

『ここは居酒屋』(真面目×強気、過去の恋)

尊敬しているけれど、恋愛するつもりのない男性から求愛された場合、皆さんはどう対処しますか。

 という質問を投げた居酒屋の一角。

 

『鶴に恩返し』(尽くし系強面×恋多き紳士)

少し肌寒くなった飛鳥山公園で。
「鶴を片付けろ」
 不穏な台詞を恋人から吐かれた。白い朝の陽光が眩しい。

 

『踊る赤鬼』(尽くし系強面×恋多き紳士)

忘年会が近い。出し物をどうしようかという悩みが発生する時期である。昔はこうしたイベントごとは、先に立ってまとめていた青鬼だが、ここ数年、部長職についてからはマネージャーに指示を出すだけですべてが終わるので完全に油断していた。

 

『こわいモノ』(執着攻め×強気受け)

こわいモノの近くに居続ける事が難しそうだったので逃げた。逃げたら、こわいモノのこわさが増幅した。いよいよ逃げられないぐらいこわくなって、向き合ったら少し、そのこわさを軽減する事が出来た。

 

『夏の陰色』(正義感の強い人間+美しい妖)

初客を取らされようとしている陰間が、戸にへばりついている。
 嫌だ、お父さんお母さん、嫌だ、嫌だよう。

 

『つちのこ』(不妊に悩む妖怪カップル、堅物×健気)

 今日の朝も産声を聞くことなく、気まずい思いで寝床を出た。
 大河童種の大賀九郎は、冷えた朝の寝室で服を身につけながら、大きな溜息を吐いた。白い息がシャツのボタンをかける自分の手に掛かる。
 どうして、と口の中で作った声を飲み込む。